Eno.110 永久の旅人

■ これまでの記録



 ++ 無人島脱出から数時間後/船上


「あら?」


キャリーの中を整理していたらいつの日だったか、みんなのことを書き記した木製のメモが出てきた

「ふふ、こんなものも描いたわね~」


数日前のことなのに、それすらも懐かしく、愛おしく感じて

「そういえば、全員分は描いていなかったわね
せっかくだから、全員分描き替えちゃいましょう!」


木材を船の炉にかけて、炭にして
破材となった木材にみんなの似顔絵を描いていく



アツシさん
なんだか懐かしい雰囲気を感じたんだけど…ここで会ったのが初めてだし、気のせいかしらね
キャリーのアルバムにも貴方の写真はなかったし
猫好きの印象も強かったわ
元の世界に帰っても猫を撫でられるといいわね

サートくん
多分みんなの中で一番元の世界に帰ることを望んでいたかも
彼女さんがいるって聞いていたけど、私には恋愛なんて程遠い話だったから会話に混ざれなくてごめんなさいね
どうか、お幸せにね

メグルくん
最後まで認めてくれなかったけれど、貴方はこの島のリーダーだったわ
私が拠点に運び込まれた時にテントに案内してくれたのも貴方だったわね
今の私がいるのは貴方のおかげよ、感謝しているわ

ベル中尉
元の世界に直帰、ではなくて、世界を見て回ると聞いて少し安心したわ
…争いのある世界だと聞いていたから
貴方の優しさがあれば世界もきっと…なんて安易に口にするのは烏滸がましいかもしれないわね

ジセレカちゃん
出会った頃はミステリアスな子だなと思っていたけど、お料理が上手だったり、何かとみんなのことを気遣ってくれる 超出来る子だったわね
出港前に振る舞ってくれた島の特産物フルコースの味は 今も心の中に…

シマさん
小屋の補強や罠も…作ってくれたりしたのかしら?
大掛かりな仕事の殆どは彼が受け持ってくれていたような気がするわ
冒険家らしいから、彼とは自然と再会できそうな気がするわね

ゼンくん
多分恐らく絶対に猫ではないわね
長い、長すぎるのよ…
そこまで伸びるなら陸地まで伸びたら脱出できたんじゃ…というのは野暮な話ね
突っ込んだ私の敗けだわ…

フォグくん
船の設計から舵取りまでお任せしちゃった船長さんね
貴方はもう立派なキャプテンよ
海賊ということは…海の旅をしていたらまた会えるかしら?
その時は冒険談をたくさん聞かせてね
私も、何かお土産をもって行くから

ミツバくん
同じ猫班で、一緒に鼠取りをしたり
…したかしら
貴方とはあまりお話できなかったけれど、リーダーを支えている姿を何度か見かけていたのはここだけの話ね
人が見ていない所で努力してる人、素敵だと思うわ

イヴァーナちゃん
颯爽と駆けていったけど、私、貴方のことも忘れないわ
この島で唯一、イカダに乗った2人ですもの
今はどこを飛んでいるのかしら
もしかすると、私達の真上にいたりしてね

???
物資が足りなくて困っていた時に、枯渇していたはずのものが補充されていたことがあったわ
倉庫の伝言板に誰のものでもない文字があったから…誰かもう一人いるんだな、と思っていたけれど、最後まで会えなかったのが残念だわ

ボス
神様だとみんなで崇め祭っていたけど、実のところ…どうなんでしょうね
もし本当に神様だったら私の旅を終焉に導いてもらえばよかったかも
ボスなら、私を殺めることも…この話はやめておきましょうか

サミュくん
アヤノちゃんの……なんでもない
キャリーに入っているナイフは彼からの贈り物よ
<その時>が来たらアヤノちゃんのことを、宜しくね

アヤノちゃん
無人島で行き倒れていた私を救ってくれた命の恩人
記憶を失う私のことを心配して<旅>に同行してくれることになったけれど…私の呪いに巻き込んでしまってよかったのか、実は今も悩んでいるわ
いざという時は<彼>の元へ送り届ける手段はあるから、心配しないで旅を満喫して行ってね




「ふふ、
思い返してみると色んなことがあったわね
みんな…素敵な思い出を有難う」


「私は不死の異世界旅行者
いつかきっとみんなの世界へ訪れるわ
だから…<またね>」

「すぐにでも会いに行ければいいけれど、神様は意地悪だから…
次はきっとみんながいる所とは別の世界ね」


『じゃあ、次はどこに行くと思う?』
どこからかシオマネキの声がする

「そうねぇ、
どこにいくのかしらねぇ」

「もしかしたらこの記録を覗き見ている貴方の世界かも」

「なんてね」



『―――――その願い、聞き届けたり』



人は愚かなもので、
安易に願いを口にしてしまう
<誰>がそれを聞いているのか、知りもせず

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