■ ひとりの記録の最後のページ
ひとりの人間が少しだけ人生に前向きになる間に、誰がどんな物語を紡いだのかなんてのは。
側から眺めていただけの自分にはわからないのだけど。
それでも、自分が前向きになったのと同じくらい、誰かが前向きになっていたらいいなって思う。
人並みの山とか谷を歩んできたとしても、人並み以上の経験も境遇も想像つかないような身の上で。
その僅かな切れ端を、ずっと隣で眺めていた。
知らない文化の、知らない掟のもとにあったり。
どこか遠くの世界で、過酷な日々を目の前にしていたり。
ファンタジーの存在のようでいて、ちゃんと地に足をつけてそこに存在していたり。
全然違う一存在になっても、自分自身を懸命に過ごしていたり。
漂流した先でも、自分らしさと強さを失わなかったり。
途方もなく長い時間を、確かな気持ちと一緒に生きていたり。
想像もできないような喪失の果てに自分の足で立ち上がっていたり。
一度失ったものへと、もう一度飛び込んでいく勇気を持っていたり。
言葉も文化も揃わない、種族だって予想もつかない存在だったり。
本当に作り話だと思っていたような、偉大な種族のひとりだったり。
全部を理解することなんて絶対できないけれど、
ひとりひとりの気持ちや考え方の……一掴みくらいは。
ちゃんと見てたから、ちゃんと知ってるつもり。
だからこそ、そうして一掴みくらいを知った誰彼が。
大切な人や気持ちを手放さずに、望む結末へと至れますようになんて。
他人事のように、消える波間に、わがままの一つを願うくらいなら、バチは当たらないんじゃないかなって。
そんな祈りごとみたいな気持ちをここに綴ったら。
自分ひとりの思考整理はここまで。
素直な気持ちを話せる誰かを見つけること。
人のためだけじゃない自分自身を見つけること。
ちょっとした、小さな嬉しさのために生きていくこと。
きっとこれから、諦めずに続けていけるから。
このノートはもう、これが最後のページでも良いんだってさ。