■ 陸軍中尉冒険記録 其の零
───彼は結局、旅を続ける事を選んだ。
と言っても祖国へ帰るのを諦めたわけではない。何も持たぬまま帰るより、多くを得てから帰ろうと思っただけの事。新たな技、未知の技術、そして何より多くの絆。ただ敵を倒すだけではなく、もしかすると戦争そのものをどうにか出来る術が見つかるかもしれない。…これは流石に希望的観測が過ぎるだろうが。
行く当てについては、故あってサートの世界に世話になる事になった。サミュやセトも彼の世界で冒険者をやる事に決めたらしく、しばらくは一緒にいられるだろう。魔術──彼らの世界では魔法というらしいが──も発達していると聞く、学ぶにはいい環境だろう。この島での愉快な日々を、酒を酌み交わしながら語ったりもしてみたいものだ。
この道を選んだ以上、半端で終わることは許されない。学ぶべき事を学び、楽しむべき事を楽しみ、育むべきものを育む。得るべきものを全て得て、胸を張って祖国へと帰る為に。
彼の遭難、或いは愉快な日々はここで終い。
ここから先は未知なる日々。多くを得て、いずれ祖国を救う冒険の物語。

祖国よ、戦友よ、我が家族よ!少しだけ待たせてしまうでありますが、必ず帰るでありますよ!
決意のラッパは今一度、彼の中で音高く響き渡る。