■ *後日談*
とある小綺麗な家にて。

「……という感じの事が、あった」
ソファに座って事の経緯を話す。目の前にはこの家の所有者の男が一人。

ジャルセロ
「……よく生きてたなお前」
ジャルセロ。金貸しや仕事仲介などをしている猫の男。
昔は小悪党だったが今は真っ当に生きている。
現在ノイグエントが色々と世話になっている相手である。特に借金の面で。

「うん……今回ばかりは流石にダメだと思った」

「途中までは島生活も悪くないと思ってたんだけど……。
肉は食い放題だし借金は踏み倒せるし」

「今聞き捨てならねえ言葉が聞こえたんだが」

「でも娯楽は無いし、嵐や津波とかの災害が起きた時大変だしで……。
改めて現代社会の素晴らしさを実感した……」
目を瞑ればその時の光景が鮮明に浮かび上がる。
拠点が壊れるほどの強い嵐と、それから孤島を飲み込むほどの大きな津波。

(そういえばあの津波に飲まれた後、普通に死んだと思ったんだけど……)
だが気づけばカリスマセレブオールイン号の上に横たわっていた。
そして目覚めた後に海賊の女性と出会い、
彼女の話の通り帰還を望んで進むといつの間にか見慣れた世界に辿り着いていた。

(……じいちゃんが助けてくれたのかな……)
あの時微かに感じた声を思い出し、ぼんやりとそう考える。
それから、意識を失う直前の事も朧げに思い出していた。
あの時感じた絶望や後悔の気持ちが、まだじんわりと心に残っていた。

「……」

「おい、どうした?」

「……いや、何でも。
……ちょっと考え事してて……」

「……。しばらくギャンブルは控えようかな……。
ちゃんと借金完済したいし……」

「完済する気あったんだお前。
日に日に借金増えてんですが」

「一応……あとこの前じいちゃんの墓参り行った時にも
来年までに完済するって伝えたし……ちょっと頑張ろうかと……」
だがその時、ある事を思い出す。

「……あっ、そうだ……」

「楽しみにしてたパチスロの新台……もう入ってるはず……」

「……」
財布を取り出す。
今回持って帰れたのは漂流時と同様、スマホと財布だけだった。
ただ漂流時と違い、財布の中に拾った金貨数枚を入れていたのだった。
改めて手に取って見てみるが、それなりに価値はありそうに感じる。

「ええと今何時だっけ……。
よし、換金ショップまだ開いてるな……」
パチスロ代に換えようと目論む。

「……。
……ギャンブルを控えるってのは?」

「……」

「……明日から」
そう言い、何か小言を言われる前にそそくさとジャルセロの家を後にする。

「……あの野郎……」
* * *
その後ノイグエントは確かにパチスロ店に出向いたものの、
""これ以上使うとマジでヤバい""の領域を超える事なく店を後にした。
ギャンブルを控えて返済を頑張ろうという気持ちに嘘は無く、
しばらくは慎ましく生きようと考えていた。
それが長く続くものか、一過性のものなのかは分からない。
それでも、これまでよりはダメな生活が改善されていくだろう。多分きっと。