■ 社務記録14
船に身を預けて。
揺れる空と、水音に微睡み。
曖昧になった意識が、不意に目覚めたとき。
「――りや。おーい、美鳥や。」
聞き慣れた声。
揺れない空。
四方を囲む、山…。
「目が覚めた様じゃな。」
…コタローちゃん?
「うむ。息災で帰って来られた様じゃの。」
……わたし…無人島に…それで、船に乗って…。
「その様じゃの。潮風のにおいがするわい。」
…嗚呼、そっかぁ。
わたし、村に帰って来たんだ……。
「二週間程度かの。全く、おぬしが居らん間、大変じゃったわ。」
……コタローちゃん、その格好。
「留守番くらいしといてやるわい。
この時期の境内、掃除だけでも一苦労じゃったがの。」
そっか…ありがとね。
「…お? "ありがとう"が先に出るとはの。
何時もなら"ごめんね"じゃったが。」
ありがとう、の方が良いって、言ってたから…。
「ふむ? ……無人島とやら、独りでは無かったのか?」
うん。色んな、人が居て……。
………あ。
あ、ああ!!?
ど、ど、如何しよう、コタローちゃん!?
「な、なんじゃい、藪から棒に!」
わ、わたし、あの、無人島で、その、無人島で会った、人に、あのっ。
「ええい、何が言いたいのかなんにもわからん!
落ち着い………む? 待て、おぬし。
わしが持たせた護符、誰かに渡したんか?」
えっ、あ、うん…。
「…ふむ。ほーお? そうかそうか。
成程のう、しかもレアカードを引いたか…。」
…レアカードって言った?
「レア護符じゃ。くくく、そうか。
余程、"良い人"を引いた様じゃの。」
ふゃっ…!?
そ、れは、その……。
「良い良い。言いたかったのも、その事じゃろ。」
…う、うん。
「ならば良い。じゃあ…ほれ、先ずは会って来るが良かろ。」
あ、会えば良いって、そんな簡単に…。
「攻撃力4500のレアカードを舐めるで無い。
ま、そんな軽率に会いに行かれても困るんじゃがの。」
「もう二週間程度、留守番ぐらいはしといてやるわい。
おぬしの父親にも、適当言っとくから気にするでないぞ。」
え、え?
コタローちゃ、待っ…!?
「……何だって良い。
おぬしも、幸せにおなり。美鳥。」
――また、意識が、潮風に、起こされて。
辺りを、見回す。
…きれいな、海。
あの無人島より、きれいな色に、囲まれて。
高く遠く、白い雲に、見下ろされて。
波音が、歌っている。
嗚呼、そうか。
此処が。
この海が。
あの人の。
ゆっくりと、立ち上がって。
歩き出す。
だって……このままじゃ、ずるいもの。
自分だけ、満足して。
自分だけ、わかってる顔して。
わたしは、なにもわからないのに。
だから……わかるまで。
あなたに、会いに行くわ。
「……お店の名前、聞いて無かった。」