Eno.515 樅木 利亜

■ メモ_10

両親のことが嫌いでした。
お酒とギャンブルに溺れて家に帰ってこないお父さん。
上手くいかなくなると利亜に八つ当たりをするお母さん。

クリスマスが好きでした。
子供たちがプレゼントを貰える日であり、利亜の誕生日でもあります。
その日だけ特別にお母さんが作ってくれるチョコケーキが大好きでした。



利亜が12歳になった時のクリスマスイブ。
お父さんもお母さんも、もう娘の誕生日なんて覚えてませんでした。
家の中では罵声と暴力が飛び交って、利亜はとばっちりを受けていました。

ふと窓の外を見ると、外には幸せそうなカップルの姿。
逆恨みですが、そんなリア充たちが利亜には憎く思えました。

両親だって、最初は幸せだったはずなのに。
無責任に利亜を生んで、自分勝手に傷つけました。

リア充は、いつかリア充ではなくなって、私を苦しめるのだと。
……それならば、私だってリア充を苦しめてもいいのだと。
そう思って、生きてきました。

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この島へ流れ着いて数日経った頃。
サミーちゃんに誘われて、夜の海辺でお話をしました。

松明が照らす薄明かりの中、サミーちゃんの口から出てきたのは、
"元の無人島ではない別のところで暮らそう"という提案でした。

確かにもともと過ごしてた無人島では新しい流れがなくて、
ずっとずっと同じような生活をしていました。

でも利亜はそれでいいと思ってました。
別のところへ行けば、そこにはきっと自分勝手な大人たちがいます。
知らない場所で傷つくのが怖かったんです。

過去に縛られて前へ進めない利亜に、
サミーちゃんは優しい言葉をかけてくれて……
そして、身の上話をしてくれました。

お父さんに大切にされていたお姉さん。
魔法の実験体にされ、挙句の果てに捨てられてしまったサミーちゃん。

……おんなじだったんです。
私たち、ふたりとも自分勝手な大人に振り回されてたんです。

それでもサミーちゃんは新しい人生を手に入れて幸せになることで、
お父さんとお姉さんを見返してやりたいのだと。

そのために、利亜のことが必要だと言ってくれました。
こんな私のことを……選んでくれました。



サミーちゃんは利亜よりもずっと強いです。

ふたりで未来へ進んでいくためには、
隣にいる利亜がこんな弱いままではいけませんね。

サミーちゃんが利亜の未来を照らしてくれる。
だから利亜も強くなって、サミーちゃんを照らす灯になります。

この島を出て、ふたりで再出発しましょう。
サミーちゃんと一緒ならきっと、何処へだって行けますから!

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海の水位がだんだん上がってきました。
この島とお別れする時間が近づいてきたのでしょう。

拠点に戻ったらシェアテーブルが出来ていたので、
みんなでたくさんご馳走を用意してパーティーを開きました。

宴の主役はノーゼさんが作ってくれたカレーです!
まさか無人島でカレーを食べれるとは思いませんでしたね?

カレーを食べている途中、ナダさんが通信端末を配ってくれました。
利亜とサミーちゃんでひとつ、滝沢さんとみのりさんでひとつ、ノーゼさんにひとつ。
それと、ぽん子さんには世界座標を特定できるアイテムをひとつ。

ナダさんの研究が順調に進んでいけば、
この端末を通してみんなとまたお話できるようになるそうです。

島を出たらもう会えないかも、と思っていたので嬉しいです。
利亜にとってはみんな、気兼ねなくお話できる初めてのお友達ですから。

倉庫の中を整理するみたいに、みんなで美味しいものを食べて。
クラッカーを引いて、花火を打ち上げて。

これまでの人生でいちばん楽しいパーティーになりました。
利亜、この思い出を一生忘れません。



そのあと利亜は、パーティー疲れでぐっすりでしたが……
なんと、眠っている間に船が来航していたようです!

その船はこのあたりを巡回している救助船でした!
これで本当の本当にみんな助かったんですね!

お土産をたくさん持って、ご飯を食べて……さっそく乗船です!
ちょっと寂しいですが、湿っぽいのは似合わないですよね。
それにきっと、またお話できますから!

ここでみんなと過ごせて良かったです!
ナダの島のみんな、本当にありがとうございました!