■ おれたちのむじんとう
すももの周到な用意のお陰もあって、救助船が迎えに来た。
ススキの聴いた音は間違いじゃなかった。
ともかく、おれたちは無事に、三人揃って帰れることになった。
救助船の船員に、スーパーくじらごうを褒められた。
行先が判んないと危ないみてーだったから、今回は救助船に乗れ、ってことだったけど。
もしかしたら牽引して貰いながら、スーパーくじらごうの方に乗れるかも、って話になったから、一旦、進水式したのを片付けて、持ち出せるようにまとめておいた。
っても、他に持って帰れるものはあんまりないし。
何もって帰るか、三人で話したりして。
おれは、もう、なんか、完全に手に馴染んできてたから、鉄の斧もらうことにした。
こいつは今後、ふつーのキャンプとかでも大活躍するに違いない。
他は、お土産になりそーなやつを幾つか。みんなで別けたあと、珍しい花が残ってたから、それも鞄に突っ込んでおいた。
のぶのぶとかにも自慢してやろーっと。
出航前に、すももが、旗を立てた。
『わたしたしのむじんとう』
先に誰かが居たかも知れないし、この先、次に誰かがまた来るかも知れないけど。
ここは、おれたちのしまだ。
携帯電話のバッテリーが残ってたから。
旗が翻ってるのを、少しだけ、動画で撮って。
そのあと、ススキとすもも、徳の高すぎる女神と頼れるおやぶんの写真も。
ススキの帰るところは、おれたちの知ってるところとは違ってそうだった。
でも、この島にあったボトルメッセージの瓶なら、手紙が届くんじゃねーかなー、って。
すももが瓶で手紙出したい、っつったときに、それもそうだなっていう、なんか、当たり前に届くだろうって納得みたいなのがおれの中にあった。
そういうのも、この海の不思議な力なのかなー。
海はやっぱり、繋がってんだなー。
漂流して、島に漂着してから、7日。
たったの7日だったけど。
いろんなことがあったし、いろんなことをした。
ススキとすももが一緒だったから、出来たこともたくさんある。
もっといろいろ出来たらなー、って思ったことも、たーっくさん。
次があるのか、わかんねーけど。いや、ふつーは、漂流とかしないほうがいーんだけどさ。
でも、なんか、もし、こういうことがあったら、ススキとかすももがしてくれたよーなことを、おれもできるようになってたらかっけーなー、って思ったりしたし。
次に会う時には、出来るようになったぞーって言えるようになりてーなーっていう、やる気が結構出た。
んでも、先ずは。
帰ったら手紙書く練習しねーとなー。
DMとかSMSとかなら書けるけど。
よく考えたら、手紙って全然、勝手が違うよなー。
おれも国語とか文法、覚え直しした方がよさそーだ。
ススキやすもものこと言えねーや。へへー。