Eno.479 明智光秀

■ おれたちのむじんとう

 すももの周到な用意のお陰もあって、救助船が迎えに来た。
 ススキの聴いた音は間違いじゃなかった。
 ともかく、おれたちは無事に、三人揃って帰れることになった。

 救助船の船員に、スーパーくじらごうを褒められた。
 行先が判んないと危ないみてーだったから、今回は救助船に乗れ、ってことだったけど。
 もしかしたら牽引して貰いながら、スーパーくじらごうの方に乗れるかも、って話になったから、一旦、進水式したのを片付けて、持ち出せるようにまとめておいた。

 っても、他に持って帰れるものはあんまりないし。
 何もって帰るか、三人で話したりして。
 おれは、もう、なんか、完全に手に馴染んできてたから、鉄の斧もらうことにした。
 こいつは今後、ふつーのキャンプとかでも大活躍するに違いない。
 他は、お土産になりそーなやつを幾つか。みんなで別けたあと、珍しい花が残ってたから、それも鞄に突っ込んでおいた。
 のぶのぶとかにも自慢してやろーっと。

 出航前に、すももが、旗を立てた。
 『わたしたしのむじんとう』
 先に誰かが居たかも知れないし、この先、次に誰かがまた来るかも知れないけど。
 ここは、おれたちのしまだ。

 携帯電話のバッテリーが残ってたから。
 旗が翻ってるのを、少しだけ、動画で撮って。
 そのあと、ススキとすもも、徳の高すぎる女神と頼れるおやぶんの写真も。
 ススキの帰るところは、おれたちの知ってるところとは違ってそうだった。
 でも、この島にあったボトルメッセージの瓶なら、手紙が届くんじゃねーかなー、って。
 すももが瓶で手紙出したい、っつったときに、それもそうだなっていう、なんか、当たり前に届くだろうって納得みたいなのがおれの中にあった。
 そういうのも、この海の不思議な力なのかなー。
 海はやっぱり、繋がってんだなー。

 漂流して、島に漂着してから、7日。
 たったの7日だったけど。
 いろんなことがあったし、いろんなことをした。
 ススキとすももが一緒だったから、出来たこともたくさんある。
 もっといろいろ出来たらなー、って思ったことも、たーっくさん。
 次があるのか、わかんねーけど。いや、ふつーは、漂流とかしないほうがいーんだけどさ。
 でも、なんか、もし、こういうことがあったら、ススキとかすももがしてくれたよーなことを、おれもできるようになってたらかっけーなー、って思ったりしたし。
 次に会う時には、出来るようになったぞーって言えるようになりてーなーっていう、やる気が結構出た。

 んでも、先ずは。
 帰ったら手紙書く練習しねーとなー。
 DMとかSMSとかなら書けるけど。
 よく考えたら、手紙って全然、勝手が違うよなー。
 おれも国語とか文法、覚え直しした方がよさそーだ。
 ススキやすもものこと言えねーや。へへー。