■ この海に
「俺はきっと、この海で死ぬんだろうぜ」
「……冗談はよせよ――」
大部の爺さんが波に拐われて、遺体で浮いてきたあの日。
俺は後悔したし、納得もした。
皆はずっと、説得してた。
もう歳なんだから、潜るのはやめなって。
船上だけでも漁は続けられるって。
だが俺は、爺さんはその方が"らしい"と思ってたから、
何も言わなかったんだ。
――小鳥遊が空に掲げた、星の記憶。
俺たちは、この海に宿る"意思"を垣間見た。
もし仮に、海に"意思"があるとして、
海のうねりが、貪欲さから来る物だとして、
あれだけ海を愛した爺さんを拐っちまったのは、仕方ないのかもしれねえ。
きっと、その孤独を紛らわしてくれるような人だからだ。
海が爺さんの遺体を返してくれたのは、もしかしたら、
陸に取り残された俺たちに、弔いの機会をくれたのかもしれねえ。
……まあ、俺の住んでた海はこことはちげえし、
何もかも、考えすぎかもしれねえがな。
なあ、『魔の海』。
お前は今頃、海底に沈んだ俺たちの『学び舎』を、眺めている頃かもしれねえ。
7日間、信じられねえスピードで組み上げた、日用品、芸術品、文明とも呼べるその数々。
皆で汗水流して込めた、その魂。
少しでも、お前の心を踊らせる物になってりゃいいよな。
俺たちは、爺さんみてえに
その身を沈めることはできねえがよ。
覚えていてくんな。
この歌を。
音の重なりを。
俺たちが、この海に在ったことを。
俺も、お前のことずっと、
覚えてるからよ。

「 Thank you ハテコー2-1ッ!!! 」