Eno.570 奏 スネ

■ うたかたのゆめ

目を覚ましたところで、
耳元で鳴り続けるスマホのアラームを切る。

あくびをひとつすれば、
カーテンの隙間から日差しが見えた。

ああ、朝だと思って、
さっきまで寝ていたベッドを見る。
懐かしい夢を見た気がする。

ずっと前に起こった、
ハテコーのクラスまるごと漂流。
期せずして全員が同じ縞に流されていたのは奇跡だと、
のちの新聞やニュースなどで盛んに報道された覚えがある。

当時の自分達は連日のように取材してくるマスコミや、
そのほかのクラスにいる友人たち、
挙句は先生たちの追求を受けていた。

一番、質問を受けたのはあの船についてだった。
果たして製作者がどのように答えたかは知らない。
きっと誰も信じられないからだ。

おそらくその話を聞いても自分だって嘘だと思う。
だから製作者がどう説明したかは知らなくてもいい、

そのあとは委員長の病院で身体検査を受けていたっけ。
特に誰も問題はなかった、はずだと思う。
数人ほど何かが引っかかっていたみたいだけど、
あとで病院を脱走していたのを見た気がする。

周りがひどく騒がしい生活も、
数ヶ月すれば落ち着いてくるもので、
半年も経つころにはいつもの生活にもどっていたように思う。

いや、そう思っていただけで、
実際はみな、あの縞で大きく変わったようにも見えた。

私は……自分と向き合うことが多くなり、
本当の意味でやりたいことは何かと自問自答し続けることが増えた。
ついでにバイトも始めたことで知らないことを知ることが増え、
もっと広い世界があることを改めて知った。

知ったことで余計に興味をもったのを記憶している。
自分がどれだけ物を知らなかったのか、
井の中の蛙であったのかに気づいて、
学校にバイトに勉強に遊びにがむしゃらに生きていた。

それが、とても楽しかった。

高校生活を終え、大学へと進学し、就職。
ただ、それもまっすぐな道ではなかった。

いろいろな出会いと別れがあった。
多くの出来事があった。
たくさんの失敗と挫折、成功と喜びがあった。

…………どれも、かけがえのない思い出だと言える。



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ああ、と思わず声が出た、
あんな夢を見たのも当然だろう。

だってもうすぐ、あの日から10年後なのだから──


『ハテコー 2−1 同窓会』