Eno.531 ナラーシュ・ディンブラ

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船に乗ると船内は慌ただしく、「今日に限って遭難者がやたらと多い」と船員が話すのを聞いた。
あとから乗り込んだと思ったヨナミさんとははぐれてしまったようだ。船の中を探しながら歩くうちに出航となり、そう長い時間かからずに俺があの日行くはずだった港に到着した。島の周りに陸など見当たらなかったしそんなすぐ着くはずはないんだが。(あとで海図を調べたが無人島らしきものはどこにも見当たらなかった。
下船する時にもう一度彼女の姿を探したがやはり見当たらず、とうとう最後の挨拶を交わすことは出来なかった。

当然と言えば当然か。本来ならば会えない人に会ったのだ。

俺は息をついて壊れた時計を見た。時計が動いていた。

そのあとは叔父や会社の連中に出迎えられ無事でよかったと大騒ぎだ。
そこには父の姿もあった。

日常が戻り、あの時貰った鯨も写真もここにある。
叔父にはまだ島でのことは話していない。もう少し自分の中で大事に取っておきたいと思う。

また会おう、ヨナミさん。
いつか、会えると確信している。