■ コトウモリペンギンのその後
ペンギンは海賊船の上にいた。
島の動物たちの多くは島に残り、偶然船として使用しうる条件を満たしてしまったビーバーのダムにたまたま上っていた動物たちだけが、まるでノアの箱舟のように救い出された。
ビーバーの縄張り近くで生活していたペンギンも、奇跡的にその動物たちの中に混ざることができたのだが、ペンギンにはこの偶然が理解できなかった。
普通にその場にダムがずっとあるものだと思っていたペンギンは、ダムの上から飛び降り、普段通りに魚を狩り、気づいたときにはダムがずっと沖に流され、もう追い付けないことに気づいた。
そして、やってきた海賊船にあっけなく捕獲されたのだった。
ペンギンの同乗者は、最初からダムに追いつけなかったナマケモノと、サバとイワシ、それにトカゲ、モルモットだった。
魚類については、同乗者というより水揚げと呼ぶ方が的確かもしれない。
得体の知れない二足歩行の動物の群れに捕獲されたペンギンは大いに震え上がったが、彼の人生(鳥生)は、彼が予測するようにはならなかった。
彼は人間の世界で寿命まで生き、そして死んだ。
コトウモリペンギンはジーランティスで初めて発見されたペンギンだ。
そして、その個体以外はいまだに見つかっていない。
絶海の世界で捕獲された一羽のオスの新種のペンギン。
――それこそが、のちにコトウモリペンギンという種名を授かる、このペンギンであった。
コトウモリペンギンは発見当初、ジーランティスで発見されたことから、ジーランティスモリペンギンと呼ばれていた。
しかしジーランティスで同種が発見されなかったことから、ジーランティスの環境には適応できなかった、他世界から流入した種であるはずだと推測され、コトウモリペンギンの名に変更された。
彼はサイズの近い他の温帯性ペンギンと雑種の子どもをいくらかもうけたが、とうとう死ぬまで同胞と再会できることはなかった。
ペンギンは臆病で神経質な性格であったが、何故か水棲の哺乳類にはさほど警戒心を示さない様子であった。
それどころか、ホヤの仲間には積極的に近づき、排水を促すようなしぐさを見せた。
このペンギンは、何か他の動物を利用、あるいは共生関係を築いていたのではと推測されているものの、捕獲個体以外の個体が未発見の為、それらは憶測の域を出ていない。