Eno.666 ラザル

■ 君への手紙(9)

君へ。

元気だろうか?

今、僕は脱出のための船にひとりで乗っている。
そう、ひとりで。

船に乗る直前まで、花火を打ち上げたり、陽気にやっていたんだ。
けど、何が起こるかわからないものだね……。
船に乗れたのは結局、僕ひとりだった。

ルディが脱出セットをなくしたんだ。
それでシュパーズの分の脱出セットの処遇を巡って譲り合いをして……で、2人とも船に乗り損ねた。

気づくのが、遅すぎたんだ。僕。

様子がおかしいことにもっと早く気づいていたら、シュパーズの腕を取って無理やり船に乗せることが出来たかもしれない。
もしくは、動けなくなってたシュパーズのことを切り捨てて、ルディを無理やり連れてくることも出来たかもしれない。
僕はどちらも出来なかった。傍観して、置き去りにする人間を増やしただけだった。

僕、なんでこの島に送られたのか分かった気がするよ。
僕は甘すぎるんだ。見積もりも、準備も、覚悟も、なにもかも。
極限状態で甘っちょろい事をしていると人が死ぬ。それを教えたかったんじゃないかって……今となっては思うよ。

……とても、手痛い教訓を得た。
手紙では冷静に文章を書こうと思ってたんだけど、感情が荒ぶっててとても制御出来そうにない。

ごめん。何のことだか分からないかもしれないけど、叫ばせてくれ。

馬鹿じゃないのか!?
皆で助かる道があったのに、なぜ変な意地でそれを投げ捨てた?

僕たち魔法使いは感情で生きる生き物だ。だから僕の言うことは矛盾しているのかもしれないけど……。
でも僕は今、誇りとか意地とか、そういうものを許せそうにない。
そんなの、ただの自己満足だ。

そして自分のことも。
船の上でぼんやりしてなければ、行動を起こす余力があれば助けられたかもしれないんだ……。

悔しくて仕方がない。
でもきっと僕の行く先では同じような事が何度も起きる。だから、飲み込まないといけないんだ。この気持ちを。

暗い知らせですまない。
次会う時には楽しい知らせも持ち帰れると思うから、今日だけはこんな手紙だけど許して欲しい。

それじゃ、また手紙を書くよ。
それじゃ、また。