■ 陸軍中尉遭難記録 其の弐
無人だと思われていた島だったが、どうやら彼の他にも遭難者が複数いたらしい。顔を合わせてみれば、思ったよりも大所帯となった。
年下と思われる少年少女、妙に長い胴体を持つ猫、シャチやペンギン、鳥のような特徴を持つ者達。身に纏う服からして彼の知らないものばかりであり、世界は広いのだなと妙に冴えた思考で思った。

随分と変わったお人達なのですね…祖国でも見た事がない風体ばかりであります。
彼の祖国では戦争の激化もあり、体の一部を別の何かに代用した人間はそう珍しくはない。義手義足は当たり前、肉体全てを機械に置き換えた猛者さえいるという。そういう彼も戦場で頭部を丸ごと吹き飛ばされ、なくなった頭を古電話機にすげ替えている。保険として取っておいた記憶のバックアップがなければ即お陀仏だっただろう。
この状態でも前面の蓋を開けば飲食が可能であるが、逆に言えば飲食の必要があるという事でもある。それはある意味で不運でもあり、ある意味で幸運でもあった。
少し話は逸れるが、彼の祖国では食事に関する部位を交換する際、摂食機能を残したままにするか、それとも摂食機能をオミットしてカートリッジ式の栄養パックにするかを選択できる。カートリッジ式にすると物を食べる事ができなくなる代わり、カートリッジから自動で栄養が補給される為に空腹を感じる事がなくなる。また食事の手間を省く事ができる為、こちらを選択する人も多い。
カートリッジ自体は国内で普遍的に販売されている為調達には困らないが、代わりに手持ちのカートリッジが尽きてしまうと飢え死に一直線というデメリットも併せ持っている。

いやはや、カートリッジ式の栄養パックにしなくてよかったでありますね。あれは無人島では調達不可能でありますから。
森林では丸い草、岩場ではワカメ。いっぱいになった荷物を空けるべくそれらを口にしながら、過去の自分の判断が正しかった事を思い知るベルであった。