真実の書 一頁目
今まで書き付けてきた僕の真実の書は、
どうやら船が沈没したどさくさに紛れて失くしてしまったらしい。
そこで、これからの事は、
今まさに無人島の浜で乾きつつある孔子先生の大著作の余白を借りて、
僭越ながら書き付けていこうと思う──
僕は船が沈没した時、いつも通りこの大著作がもたらす眠気に負けて
ぐっすりと眠っていた。
それで良く助かったものだと思うけれど、
子供が静かに溺れる溺水反応のように、
藻掻かずにじっとしていたのがかえって良かったのかも知れない。
そんな最中に見ていた夢もまた、子供の頃のものだ。
夜、トイレに起きると、
居間からお父さんとお母さんの言い争う声が聞こえる。
そっと部屋に戻った僕は、
独り、ベッドに戻ってこう思った。
『お父さんもお母さんも大好きなのに、
どうして仲良くしてくれないのだろう』
そうして眼を瞑った僕が次に目覚めた時、
広がっていたのがこの限りない砂浜と大海原だった。
こんな事あるかなぁ。
いっそ全部が……、
うん、全部が夢だったら良かったのにな。