Eno.340 三階 楓

イントロダクション〜三階のナガサレ

学校帰りのちょっとした道草。三階は、自販機でゼリー飲料のボタンを押した。昼休みにクラスメイトが飲んでいたものが、ちょっと羨ましかったのだ。
ガコンと大きな音がして、取り出し口に飲料が落ちてくる。三階は、しゃがんでそれを手に取った。
すると、突然安っぽいファンファーレが鳴り響いた。そして、それに呼応するかのように、勝手に出てくる追加の缶ジュース。
「……あたり?」
南国の海の絵が描かれたスチール缶。ブランドを示すロゴは、どこにも書いていない……。
三階は、缶を何度も回して眺め、その正体を大いに訝しんだ。
一体これは何なのだろう。誰かの悪戯か、業者の入れ間違いか、あるいは……。
ちょっとした怖さはあった。しかし、それ以上に大きな興味が、三階の背中を押した。
プルタブに手をかけ、力を込めて開封する。
すると、中から溢れ出す大量の泡と白波。
「!」
あっという間に視界は白く覆われ、思考や意識までもが塗りつぶされていく……。
意識が消えるその瞬間、遠くでカモメの声が聞こえたような気がした。

──波の音、水の冷たさ、島の声。

まぶた越しに感じる強い光。
思わず右手で目を覆いながら、三階はうっすらと目を開けた。
手のひらからこぼれる砂の向こうに見えたのは、白い太陽と青い海。
そして……。
ヤシの木が生える、南の島だった。