Eno.432 シナイ

-1日目

ざんざん、ざぶざぶ、波が揺れている。
かなり揺れている。
外からはガタゴトと積荷が揺れ、しまいには崩れる音がした。
たぶん壊れてはいけないものが割れた音も響いてきたが、
それを確認しに来る誰かの気配も一切しない。
甲板は階段を登って、もう一度登って、更に上だ。
ここまで積荷を確認する余裕がないのかもしれない。

小一時間ほど前に数回聞こえた、ばしゃんという音。
あれが救命艇を下ろした音だとすると、もしかしたら。
ここは既に無人なのかもしれないとも考えられる。

既にどうしようもなかった。
どんなに押しても隠れた木箱の蓋が開かないのだ。


「船が壊れたら外に出られるでしょ」



これは船が壊れない可能性を考慮していなかった。