Eno.556 カイト・タックムーア

---


世界が巻き戻る。時間の渦の中に落ちて行った身体は散り散りになっていく。
そうして、巻き戻った世界でその身体は再構築されていく。

そのはずだった。

「……」

意識を取り戻したネグロはあまりの眩しさに眉をしかめて、手で日光を遮った。
青い海、青い空、身体を焼くような太陽の光。
失われて久しいそれが眼前に広がっている。

「俺は、死んだのか?」

そこはまるで天国のような世界に思えて、思わずひとりそう呟いた。
だが、その考えは次の瞬間に覆される事となる。寝転がっていた地面から、何者かに撫でられるかのような感触が広がって思わずそこから飛び起きた。
警戒したまま自分が寝転がっていた場所を確認すれば、砂の下からよくわからない物体がぐねぐねと動いているのが見えた。
足で軽く蹴飛ばすと、そこから黒い物体が一匹飛び出してうねうねと身体をくねらせる。

「……」

もしかしたら、この自分が踏んでいる地面だと思っているものは多くの生物の集合体という事なのだろうか。かなりの大きさの島程あるその全てか、それとも一部か、どちらにしろ途方もない数がいる。
様々な生物や島の生態系を知らない訳では無いが、そのどれにも該当しない不可思議な生き物が確かに足元にいる。少なくとも俗にいう天国という場所はこんな謎生物で構成されてる事は無いだろう。……無い事にしておいて欲しい。

「……チッ」

舌打ちをひとつする。
ここがどこで何をすればいいのかなど何一つわからないが、黙っているのは性に合わない。
まずは生きねばならない。

もう、生に諦めを持つ事は終わりにしたのだから。