Eno.275 君影 早霧

1日目 森林


飲み水を探しに森へ入った。
血の気が引くような感覚はきっと木陰が涼しいせいだ。

水を見つけた。
……雨水や湧水ではない。泥水だった。

少し歩いて、水を見つける。
……また泥水だ。飲めそうにない。

また歩く。覗き込む。泥水が溜まっている。
また歩く。動悸が煩い。泥水が溜まっている。
まだ歩く。背筋が冷える。泥水が溜まっている。

こんな何処ともわからない場所まで来ても、泥との縁は切れないらしい。

あの日の恐怖に竦む足をむりやり動かし、
悪縁が繋がったままであることへの歪な安堵を押し隠して歩みを進める。

もう少し辺りを探索したら戻るとしよう。
明るく開けた、皆が集まる砂浜へ。

そうすれば、こんな思考に囚われることもない。
皆が一緒ならば、無人島だって楽しめるはずだからずっと恐怖を隠して過ごすだなんて、とても正気ではいられない