Eno.582 メロウィア

これまでのこと。これからのこと

ふと、ここへ来る以前の父の言葉を思い出していた。

『これは私達の血の呪いなんだ』
『呪いが発現してしまった以上は、この地に留まる事は決して叶わない』
『メロウィア。幸か不幸か…君には、とある吸血鬼から招待が届いている』
『彼、或いは彼女の誘いに乗り、多くの得難い経験をすると良い』

木漏れ日が射して来て、僅かに肌を灼く。
どうやら私は孤島へ遭難してしまったようで、
暫くは、他の吸血鬼達と生活を共にしなければいけないらしい。

……物凄く緊張する。

こんな強烈な日射が降り注ぐ孤島では、文字書きに浸る事も出来ない。
まさかこの手帳も、自分自身が遭難日誌になるとは思っていなかっただろう。

ここまでペンを走らせて、持ち出して来た手帳へ感情移入してしまっている自分が居ることに気付いた。
まさか私が古城から追放され、ここまで落ちぶれるとは予想だにしていなかった。

…でも、フィグ様が言うように、あって当たり前だったものを作っていくことは、
そんなに嫌じゃない。…むしろ好ましいかも知れない。少なくとも、確かな達成感を得られている。
これから…どうなるだろう。最後には希望を掴み取れたらいいな。