Eno.218 須守 つばめ

巣を守る燕が流れ着いた先は

例えば、例えばの話。
自分の住んでいる世界が、
一見平和に見えるが、実は裏では深淵に潜む恐ろしき者たちがいたら。
それに対抗する為、秘密の組織が暗躍していて、不思議な術や道具で世の平和を守っていたら。
その守っている者の中に、元は悪役扱いであったが、自身の正義のために人々に力を貸す人物がいたら。
それは、とても幻想的で、魅力的ではないだろうか。
固い信念を持ち、秘密を抱える者。悪とも善でもなく、ただ自分の道を進む者。
それは、とても魅力的で……かっこいい。


つばめはそう思った。幼い頃に読んだ子供向け小説から大きな衝撃をもらった。
から、今のつばめ……「飛燕」がある。
元となった小説の人物に似つつも、自身で新たな特徴を加え、考えた姿。それが「飛燕」であり、常に纏おうとする姿である。


まあ、一言で言ってしまえばカッコつけというやつだ。彼は例えばの話の虜になった、ただの勉強熱心な男子大学生である。



つばめは、これまでに遭難なんてしたことなどない。
ただ、妹が。
遭難を理由にかつて行方不明になっていたことがあった。
数日の間、どこを探し回っても見つからず、半泣きの状態で手がかりを求め駆けずり回ってた時に、妹は突然に帰ってきた。
急ぎ慌て事情を聞くと、妹は申し訳なさそうにこう返した。

「遭難していた」と。

信じられようがなかった。
妹の行方不明になる前の最後の行動は、ただ近所のコンビニエンスストアに立ち寄っただけだった。
ただの田舎町で、海なんてない。のに、何故無人島に遭難しようか?
だが妹は嘘をつくような性格ではない。
あの時告げられた声だって、至極真面目だった。
だが、どうして。いかでか。考えても答えはわからない。



わからな、かった。
今自分がこの島に遭難するまでは。
外の暑さに茹だりながら、外へ買い出しに出かけて。
そして、気がついたら無人島に流れ着いてしまった時までは。

自分の身をもって、自覚したのだ。


「ここはいづこなりや~~~~!?」



ああ、こういうことだったのかと。