Eno.204 半人半鯨のフート

海の子ら

フートが住む『海の国』は、
豊かで暖かな海に面している。
故に海は彼ら彼女らの生活の要であり、
それははるか昔からそうであったらしい。
そしてそこには、信じるものが生まれた。

現在では北方より来た教えなども混ざり解釈が多岐にわたるものとなっているが、
『聖海の教え』と、フートが信じるものは呼ばれている。

源流は、海への畏怖と感謝、
そして永く永く海と付き合うための節制。
海と生きていれば自然と生み出されるものに、
人々が一つになる気持ちと、
少しの魔力と奇跡が折り重なって出来た教えである。

海を穢してはならない。
海の恵みは海の慈悲であり、
それを節度なく扱うことは許されない。
与えられた慈悲の分、
此方も慈悲を返さねばならない。
海にも人にも、慈悲は遍くあるもの。

海は水であり、風を生み、
底に大地を湛えるものであるから。


だからフートは、この島では特に。
海への祈りの言葉を、時折呟くのだ。