Eno.704 アスエリオ

アスエリオの手記6


 それは いつかの おはなし
 ゆめを みたんだ

  ◇

「デイズ・アーヴェントです。
とりあえず、よろしく?」

 黄昏の髪に宵闇の瞳。鮮やかな橙と紫。黒いコートを身に纏った少年は、連れて来られても笑っていた。
 魔局に連れて来られた。その意味を、理解出来ない訳ではなかろうに。
 彼は確かに明るめの性格で。けれどやがて、私たちは気付いていく。

「……デイズは、生き残るつもり、ないの?」
「ないよ」

 彼はあっさりと頷いた。

「僕の代償、理解出来たろう。僕は僕なりに頑張るけれど、最期はみんなに全て譲って消えるつも──」
「ふざけるな!」

 怒ったのは、何故だろう。

「何で、何でデイズはそんなこと言うの。みんなで何とかして生きて、生きて、ここから出ようよ!」
「──夢物語を語るのは簡単だけれど、ならば、どうやって?」
「…………っ!」

 私は、返す言葉を持たなかった。

  ◇

 アンディルーヴ魔法研究局、通称、魔局。魔法の才能のない子供を攫い、非人道的実験を繰り返し、“作戦”という名で他国との戦いに送り出すところ。私たちが生まれ育ったのはそんな場所だ。
 そこでは死なんて日常茶飯事。子供たちがいつも死んで、或いは失敗作と判断されて処分されて。

 デイズは己を“失敗作”とうそぶいた。彼自身の持つ力は地味なくせ、その代償は進行すれば命さえ奪い得るもの。
 彼との会話で私は気付く。

──もう、誰も失いたくない。

 別の“チーム”にも知り合いが出来て、私の世界は広がっていったけれど。失うことを、恐れたんだ。

 姉さんにだけは伝えた私の夢。“みんなでここから出られますように”。いつかこれは、叶うでしょうか?

 死んだのはデイズじゃなくてジェミニだったけれど。失うことが、私は怖い。

  ◇

 そんな ゆめを みたんです