Eno.604 加田住 奏

イラノンと僕

飢える。
喉が渇く。
なんとなしに体調が悪くて、昔を思い出す。

僕がまだ一回目の生命だったころはずっとこんな感じだった。
才能もなく道端で転がってずっと天をにらんでいたあの頃。

夢だけが見たい。
歌だけが歌っていたい。

喜びもなく殴られ労働だけをする人生は、いやだ。



『猫』になってからはそんな事はなくなった。
事務所は歌に溢れていて彼女の歌が聞こえてくる場所だった。
お互いに興味はなかったけれど仲間もいたし、安息を感じていた。
ずっと続けばいいのにと思っていた。


ここは、ひもじい。
ここは、寒くて暑い。

でも抱きしめてくれた友達がいる。
友達かな?
皆に優しい子だもの……本当は僕なんかが友達って言ったらだめかもしれない。
でも友達って言っても怒らない気がするから、友達。

お腹すいたって言ったらご飯を焼いてくれる人もいる。
知らない同士なのに、協力しようっていってくれた人がいて
皆、自分もおなかすいてるのに皆の為に頑張ってる。

ここは嫌だなっておもう。
でも、ここは嫌いじゃない。