追憶の書 四頁目
──僕が小学校低学年の時、
毎夜のように続いていた両親の言い争いが
ぱったりとなくなって、
代わりに夜遅くまで働いていた父さんが家に帰らなくなった。
その事を母さんに尋ねると、
母さんは寂しそうに笑って言った。
『あの人は私と素直を裏切って、
他の人と一緒になったの』
……母さんの言葉を心の底から信じられなかった僕が、
その時、何と答えたのかは、今では憶えていない。
ただ、その時に母さんが言った言葉と、
笑っているようで、泣いているような表情は、
今でもこの脳裏に、鮮明に灼き付いている。
『あなたはあの人のような嘘吐きにならないでね』