Eno.582 メロウィア

泥水の味

苦汁を嘗めるとは、正しくこのことを言うのだろうか。
喉が乾いて仕方が無い。魔力も上手に練られないから氷塊を生成することすら叶わない。
だから、躊躇いながらも…目の前にあった泥水を強引に飲み干した。

これは、口に入れるものではない。そう、脳が拒否反応を示す。
口内が砂利と木屑、それから苦味で満たされる。
けれど、飲まなければ倒れ伏してしまうだろう。……その時に、何かが吹っ切れた気がした。

サバイバルブックは半ば参考書のようでもあった。
見様見真似で釣り竿を作り、揺れる水面へと垂らす。…私が初めて釣った魚は鮫だった。
後に判明するのだけれど、この島の付近はどうも鮫まみれらしい。シンプルに恐怖。

それから、慣れない手付きで鮫を捌いたり、焼いたりしてもみた。…これが美味しい!
臭気がきついのが玉に……どころではなくキズだけれど。


泥水の味は酷いものだった。でも、やってみなければ分からないこともある。
私はこの、文字通りに苦い経験を…何とか美談へと昇華させようと思った。