Eno.645 ヴィクトル・トート

未送信の記録


そもそもからして、あいつがパンを焼くのは、別に自分の為じゃないことを知っている。
だからその時点で違っているし、出発が違うのだから、違うものが出来上がるのは当然のことだ。
目的も違えば環境も、材料も、作る手だって違う。
同じものを求めるのが間違っている。
同じにならないのは、当たり前のことだ。
僕の欠落も、あいつの飢餓も、同じようで違う。
理解は出来るけど、同じにはならない。
そうじゃないといけないんだから、これでいいんだ。

まあ、それはそれとして、フジモリイツキに手伝ってもらって焼いたパンは本当に笑っちゃうくらいパンだった。
なんなの、あの木の実。めちゃくちゃ面白いじゃん。
持って帰れるなら持って帰りたい。
あっちでも、同じものが作れるかな。
もしそうなら、あいつにパンを作らせてやろう。
笑っちゃうくらい、本当に、パンになるから。
たぶんきっと、喜ぶんじゃないかと思う。