Eno.226 ケリヨト

ここに来る少し前の話 過去7

英雄は、私を殺そうとはしなかった。

それどころか、国を滅ぼした私についてこうも宣った。

「全て葬り去ってくれてすっきりした、礼をしなけりゃならんくらいだ」

これが、大量殺戮者に言う言葉か?あの瓦礫にはゴミ以外の人間も埋まっているというのに、英雄の家族も埋まっているというのに、この男は「従者」の私しか見えていないようだった。

気持ち悪い。
私でさえいくらかの罪悪感はあったというのに、まるで持ち合わせていないような言動に、私は心底失望した。

自分しか愛していないくせに人に愛されたがっている哀れな人間にこれ以上構うつもりはなかった。

致死量未満の毒を打って、私は英雄の前から姿を消した。



「それで済めば良かったんだ。今思えば、あのとき殺しておけば良かった」