Eno.226 ケリヨト

ここに来る少し前の話 過去9

私の種族は魔法が使えない。

外部からの魔力は通すことが出来ても、内側から魔力を捻出することが出来ない。

あの男は魔法に長けていた。私が簡単に捕まってしまったのは、今思えば仕方の無かったことだと言える。

一生逃げ続けておけば良かった。会ってしまったことが運の尽きだろう。

男は「二人きりで旅をし続けたい」と言った。
私に拒否権はなかった。

いや、抗議はしたのだ。

「お前と旅をするくらいなら死んだほうがマシだ」

そう言った。それに対する言葉は、狂っていた。

「死んだらその骸を永遠に抱いてあげる」

嫌な記憶が甦ったことを覚えている。

弛緩した大人たちの死体。皮を剥がされた子供の痛みや苦しみが綴られたレポート、研究資料に乗っていた知り合いの死体解剖図、見覚えのある鱗…

死んでなお玩具にされてたまるか。


そして、航路で船に乗せられた後、私は隙を見て海に身を投げた。


死ぬなら遺体の出ない方法で死にたかった。


………幸か不幸か、私はこの島に流れ着いた。
死ぬことなく、身が欠けることなく、持ち物までそのままだった。