Eno.473 真白野 陽子

―――
――


 女は紅茶を一口飲むと、ほう、とため息を吐いた。
少女を臨海学校に送り出して少しの休憩時間が出来たが、明日にはもう帰ってくる。
そのことを考えると頭が痛くなって仕方がなかった。

 ……こんなことになるなら最初から引き取っていれば。

 そう悔やむが、親族の遺児を積極的に引き取る程、余裕もなければ善人でもない。
であればこれは仕方のないことだと諦めるしかない、が――

 引き取るなら”ちゃんと”育てなさいよ。

 少女の育ての親であった亡き叔父に恨み言の一つぐらい出てしまう。
叔父は少女をどうしたかったのか。立派な猟師に?それはもう分からない事であった。


 真白野陽子。少女が来てから女の家庭はめちゃくちゃだ。

一つ、電柱に登って警察沙汰。
一つ、近所の犬と喧嘩して平謝り。
一つ、キッチンで鳩の血抜きをしていた時は悲鳴が出た。

――等々。
その度に辛抱強く説明して、二度とやらないよう約束出来たものの、それでもまだ現代人には程遠い。
次に直してもらう点は人の気配のする場所では寝ない――家であっても!――事である。
寝る時間になればいつの間にか消えていて、朝になったら服に葉っぱやら土やらをつけて戻ってくる。
今のところ事件に巻き込まれる側にはなっていないが、とても気が気ではない。
少女が返ってくる前に、夫と作戦を練らなければならない。

 女は重たい気分と共にもう一度ため息を吐くと、いつの間にか冷めた紅茶を飲みほした。