Eno.526 鍋島直哉

野菜炒めだけ食いに来ることあるか?

豆苗炒め。
俺の…苦手メニューだ。だった、が、正しい。

クソジジイの教え方が直感的すぎて、「ガーッとやる」とか言われてもわかんねえし。
硬すぎるか柔すぎるばっかで、いまいち「うまい」レベルにならず、
注文されるとかなり困るメニューだ。じじいがいるときならいいが、たまにパチンコとか競馬とか行くからな。


ところが、そればっか頼む珍しい客がいる。
何森は頻繁に来ないが、それとジジイのギャンブル癖が重なった時、
俺はかなり嫌な気持ちになった。

料理は「感覚」を掴むまで、いまいち調整が出来ない。
今日暑いなら塩気を強く、みたいな程度だが、炒めモンはそれがわからない。

とはいえ、そればっかり頼まれるもんだから、
俺も店が終わった後に練習して、なんとか呼吸を掴んだ。

簡単に言うが、面倒だ。余熱で火が通り、皿を出すまでの時間を逆算する。
たかが380円の炒めもんと言われちゃおしまいだが、
豆苗炒めが一番うまいのは炒めたてなんだ。

まずいもんを出して金貰うのは料理人つうより物乞いだ。
「めちゃくちゃ美味しくなったなー!シナシナしてないし!」だったっけか。
正直なことで。

俺の苦手メニューは得意メニューになったわけだから、
腹パンはやめておいてやる。