Eno.70 佐々木 真名

(16)

「まーたマナないてる」

「だってえ、むりじゃんこんなの」

「うるせー」

蝉の音がうるさい夏。多分今よりもう少しマシな暑さ――と感じていただけ――だったあの頃。
小学生だった私達は、目の前に立ち塞がる試練木に引っかかった風船に途方に暮れていた。

「ねー、あぶないよ、かえろうよ」

「だまってみてろって」

諦めて帰ればよかったのに、その頃からバカだった私と彼は、その風船をどうにかしようと躍起になった。彼はちっさい身体で木に登る。私は不安やらなんやらで泣き喚く。

「あっ、いて」

「ねーーーー」

案の定、そこそこの位置から彼は落ちた。どうしたらいいか分からず、滅茶苦茶泣いた記憶がある。

「あっ、だいじょーぶか? 怪我とかないか? 気をつけろよな〜」

通りすがりの女の人に、声を掛けられた。彼は怪我はなかった様子だけど、決まりが悪そうにぷんすこしていた。

「なんともねーし!」

そう言ってもう一度登ろうとする彼を、その人は呼び止めて。

「代わりの風船私があげるよ。……ほらそっちも泣かない泣かない」

いつの間にかその人の手には、新しい風船がある。驚いて涙が引っ込んだ。

アルテマラビットのマジカルバルーンだぞ〜

「??????」

「ありゃ、反応悪いな???? ……それともありゃ何かすごーい思い出がある風船なのかい?」

若干や微妙なネーミングセンスにぽかんとしつつ、質問に対しては特に思い出はなかったので首を横に振る。

「まあ、危ない事しないようにねえ」

そのままその人の不思議な雰囲気で言いくるめられてしまった私達は新しい風船を渡されて。きゃいきゃいはしゃいでたらいつの間にか女の人はいなくなってた。

「あれ? ……あのひとだれ?」

「さあ?」

お礼、言い忘れたね。と、顔を見合せ帰途に着く。空にはなんとも言えない曇り空が広がっていた――



――なんの夢????
いや、懐かしいけどめっちゃ妙なトコ見るじゃん。……あの女の人も魔法使えそうな――大道芸人の衣装着てた気がするなあ。実際、あれどうやったんだろう?

面白かったからいいか。