Eno.473 真白野 陽子

さん

『オレの知っている事は全部教えた。
 あとは外を知って、学べ』


 それが”じじい”の最後の言葉であり、約束だった。
少女はそれを守ろうとしている。守ろうとした。
しかし、外は森とは全く違っていた。

 違う事を一つ一つ挙げればきりがないが、一番大きかったのは、何もしなくても明日が来ることだ。

 引き取った夫婦は、狩りをせずとも食事をくれる。寝床をくれる。
それがとても――気持ちが悪い。
生きるためにすべきことをしないのに生きる事が保証されるのは、檻の中の獲物のようだった。
周囲の変化に取り残され、死を待つ獣のようだった。


 ”今”は違う。この無人島の中で、やれることがある。生きる事が出来る。

それでも。
それでも――

胸のあたりに風が吹き抜けるような感覚は、何なのだろう?
文明の中でも感じたこの冷たさを、この島でより強く感じるのは何故だろう?


違い、なんだ。教えろ、じじい!




それに答えるものは、既になく――