Eno.502 多比良 夜伴

【-どうでもいい話・3-】

シマに来て数度、とても深い睡眠をとれている。
蛇に呪われて以来こんなに健全で満足のいく睡眠なんて出来た事があっただろうか。
…ないな。

毛玉がでっかくなり、俺を餌として運ぶ悪夢を見たあと…不思議な夢を見た。


気づけばどこかの神社……いや、細部は違うが百目鬼神社だ。
そこに立っていた。

眼前に広がる景色は馴染んだものとは違う。
雪がちらついたかと思いきや桜が散り、星が流れる。
異様としか言いようがないが何故だが恐ろしいとか奇妙だとは思わない。ただ、酷く寂しい場所とだけは感じた。

少し進めば人の姿が見えた。
後ろから見ても分かるほどの大男だ。ツノの端も見えるから多分…鬼か…?

声をかけようとする前にそいつは振り返り、此方を見て目を見開き詰め寄ってくる。
何だか滅茶苦茶驚いているらしい。
口がぱくぱくと動いている事から何かしら話しかけてきているんだろうが…生憎、俺には何も聞こえない。
音声をミュートにした動画でも見ているようだ。ちょっと面白い。

「あーっと…悪いな、何話してんだか聞こえねえんだわ」



此方の声も聞こえないかは?もという杞憂は直ぐ様解消された。
大男が見るからに肩を落とし、眉を下げたからだ。あからさまにがっかりしている。…なんなんだ…?
そいつは顎に手を当て考える素振りをして…何か思いついたらしく自分の口を指さす。
…多分唇の動きを読めと伝えたいようだ。

「おー、それならわかるかも?」



大男はにこにこしなごら頷き、ゆっくりと口を開く。



『す』



『ま』



『な』



『い』

…?
何で見ず知らずの奴に謝られてんだ…?



そいつへ眉を下げ、悲し気に微笑んでから俺の頭をわしゃわしゃと撫で回してきた。

犬じゃねえんだぞ!と抗議しようとした所で目が覚める。

「…へんな夢だったな…つか、誰だあれ?」



起き抜けだから頭が回らない。
それに、思考を巡らすよりも寝場所ここから立ち去る事を優先しないと。