Eno.275 君影 早霧

3日目 拠点


自分の内に線を引いた。

感情を向こうに置いて、自分の体への労わりを諦めて、
皆の安心のために振る舞うことにした。
ちゃんとしたものを皆と食べるろくに喉を通らないものを詰め込むだけで心配させずに済むのなら安いものだ。

……心配だと、食べろと言う割に
本人がそうしていない者がいるのは少々納得がいかないが。
主に星名ちゃんと月白先輩。

星名ちゃんは雨が降るたびにぼんやりとして、
先輩は誰かが止めないと率先して無茶をしているように見える。

上矢も魚を釣ってきてくれては倒れているし、
私ももっと足りない場所を補って回った方がいいだろう。

食材や素材が必要なら外に出る。
作業の人手が足りないなら拠点に残る。

水溜りに足が竦もうと、濡れて纏わりつく服で体が強張ろうと。
そんなことはどうでもいい。全部、全部見ない振り。

だって、私の感情は無用な心配を煽るだけのようだから。
そんなもの、今この場ではどうだっていい。

誰にも心配をかけなければ踏み込まれずに済むのなら、それだけで少しは息がしやすい。