追憶の書 八頁目
──小学校の頃から、僕は学校という場が好きだった。
ここでは母の言う通りの正直者でいれば褒められるし、
給食があるから食事の心配だってない。
僕は自分の家庭生活とは裏腹に、
学び舎の中ですくすくと育っていった。
ただ、小学校も高学年となれば、
自我は育つし人間関係も複雑になってくる。
ある日、僕は学業とは関係のないものを
学校に持ち込んだ子を厳しく叱責した事があった。
けれど、後から聞いた話によると、
それは友人に向けての誕生日プレゼントだったそうだ。
僕は次の日、学校に来なかったその子の家に行って、
しつこいくらい謝ったのを良く憶えている。
その帰り道には、担任の先生からかけてもらった、
『嘘も方便』『目を瞑るのも度量』という言葉が頭の中をぐるぐると巡って、
終いにはその事を、母にも漏らしてしまった。
そして、それだけは……本当に良くない事だった。