Eno.325 鮫島飛鳥

偶像虚像

アタシはいつも薄味だ。
人の痛みとか、痛いのはわかっても、それがどんくらい痛いとか、どんな感触だとか、そーゆーのはよくわかんねえ。

アイドルは、虚像だ。
アタシに近いものだと、最初は思った。
でも、やってみたら芽が出ない。なんか違う。
……どこ行けばいいか、何すればいいかわかんなかった。
迷子だった。
だから……ここに流れ着いたのかもって今は思う。



マナぴの幼馴染は、あの浜辺に”いなかった”。
異世界人だって流れ着くこのシマにも、過去に戻れるとか、そんな優しさは無かった。

アタシ達が生きる時間は、戻せないし戻らない。
それってスゲーしんどいことだと思ってて、でも全員のつらさを知ることは…………そうか、無理なんだ、最初っから。
……だから、だから虚像アイドルがあるんじゃねえか???
少しの間痛みを忘れさせてくれるから。
そのちょっとの余白……余力が、その人の救いになる可能性が、あるから。

いつかマナぴがアタシじゃない人と手を繋ぐその日まで、アタシはマナぴの隣人アイドルであれたらいいと思う。


「……目指す場所を決めた。一軍の舞台のド真ん中だ。
それが一番、マナぴがアタシを見つけやすいだろ?」