Eno.645 ヴィクトル・トート

謎生物日記4



「喜べ、ヨナ。お前のために【そり】を作ってやったぞ」


……ってヴィクトルが言っていた。
あんまりにも唐突すぎる話だ。
なんでもそりを作る為にこの嵐の中、わざわざ木を取りに行ったらしい。
まああいつが考え無しなのは今更だからそれは構わない。
構わないのだが。

『……おれのための【そり】って、どゆこと……?』


荷物がたくさん持てるようになると言っていた。
それはそうだろう。結構なことだ。
でもそれがなんでおれの為なのか。
もう火を持ってなくてもいいということだろうか。
それなら確かに助かる。燃えなくても熱いもんは熱いし。
あいつもたまには効率的なことをするんだな。
そりがあれば、たくさんのものを一度に運ぶことが出来るからな。
それはきっと全くもって歓迎すべきことだろう。
間違いない。

『……あれ。そのそり、誰が引くんだ?』


ヴィクトルは答えなかった。
何にも言わずに、無言のまま、おれにロープを括り付けた。