Eno.83 森の夢『クィラ・クィラ』

心臓の夢

私は夢を見ているのだろうか。
蒼い空、碧い海、青い森。眩しい景色、豊かな自然。そして人々。

走馬灯ではないだろう。知った景色とは思えない。
幾度か肉体が崩折れた覚えはあるが、死んだ覚えも特にない。
私は私の家族ほど優れた者ではないが、生命力だけは人後に落ちない。

ああ、この者を通して見えているのか。森に生きる何者か。
意識を失い流されている間に捕まったか。私が栄養源として丁度良かったのだろう。
土扱いは業腹ではあるが、植物を育てる仕事をしておいて、土に還らぬのも傲慢か?

だが私は生きているだけで動ける状態ではなかった。
彼が大きな陸を求め動いているのは実際都合が良い。
仕方がないな。事後だが承諾してやろう。感覚は快とは言えぬが悪くない共生関係と認めよう。
何、しばらくは骨にもなるまい。無理が祟れば保証はできぬが。

彼は森を好み望んでいるらしい。私もまた森が好きだ。
そういった緑の縁で結びついたのかもしれない。

森の夢を叶える為に動くならば、今しばらくお前の心臓をやってやろう。
小島ではなく大森林に辿り着いたのなら、その時料金を支払ってもらう。