Eno.319 ニシュプニケ

...風の中...



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「あの日、あの子は何て言っていたっけ」


嵐が来ていたようなの。私はすっかりそんな事、知らなかったけれど。
でも私、彼女の気持ちが痛く分かってしまったのよ。
そんな時に私が欲しかったのは、否定も肯定もしないまま。
何でも無い事を話したり、何でも無くしてくれる人だった。




──そうしたら彼は酷く乱したらしいの。まるでいつかの僕のようだったわ。
怖いのと寂しいのと不安なのと、とにかく色んなものが混ざったような。
でもそれって私の目が見えないからでしょう?
私はそう思うと、誰かの優しい心配さえ嫌になるのよ。

暑いからと言って冷や水を一人だけ、ずうっと浴びせられてるみたいだわ。


「それで僕はどうだったんだっけ」


彼は彼らしく、己の出来る範囲で私を尊重しようとしていたの。
だからあんなに不安がっていたとしても、私を1人で行かせたのね。
そう、それは試しのひとつであったのよ。

“居て欲しい時”と限定した、意図の。


「それでわたしは、」




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