Eno.419 鈴雪スグリ

氷室にて

見事なまでに典型的な熱中症。
氷室にほど近い場所に仰向けに寝かされ、
貴重な医療キットまで用いた処置を受けて。
少女はぼんやりと天井を眺めていた。

頑張らなくていい、と。何度も言われる。
協力するのだから、と。持ちつ持たれつだ、と。
この異常事態だ。
身分も階級も、きっと種族さえ関係ないのだろう。
頭では分かっている。
頭では分かっていても。

「それでも、それしか知らなかった」



選択権など無かった。
頑張らなくてはならなかったのだ。
でなければ見限られ、それは即ち何もかもの終わりを意味する。

少女にとって、生きることは頑張ることであり、
頑張らないということは、諦めることだった。

……やだな。
 頑張らないことを頑張ろうとしてる



溜息。今は療養に務めよう。
確かに乾きゆく喉も気には掛かるが、今は。

……目を細める。
かすかな微睡みのなかで、
うすぼんやりと、透き通った優しい声を思い出す。
足の治療と共に、戯れに口遊んでくれた旋律。

「……子守唄、か」



私も、歌ってもらったことがあったのだろうか。