Eno.14 神崎 考希

神崎の手記(安眠効果のある花)

必要箇所の道路舗装を終えたので道路作りと並行し、
作り方を模索していた煙草の代わりになるモノを作る事に目標を絞った。
煙草は島で唯一の医学知識を持つルーシーが欲していたモノだ。
彼女に倒れられると俺たちに為す術はない。

葉巻はこの島の葉の形状と質、共に合わないと身をもって実証した。
そもそも煙草を吸わない俺の吸い方が悪かったのかもしれないが
盛大にむせたし、ただただ燃焼するモノがあるという感じだった。

パイプは吸い口の穴を細くする事が出来なかったので加工の面で難しかった。
こちらも盛大にむせたし、少し燃え草が口に入った。熱いなアレ。
そもそもニコチンなどは含まれているのかこれ……色々入れてみるか。
キノコとか? そんな何が起きるか分からんモノを入れてたまるか。

製作に行き詰っていた頃。
ふと、何故こんなむせるようなモノを欲するのだろうかと疑問を覚えた。
『精神安定』『気分転換』
日常的に喫煙する者にはそういった作用がある。
つまり煙草はそれらに類する精神的なモノを得る為の手段だ。

俺はようやく彼女が本当に欲しているモノに気が付いた。
『精神的疲労の回復』
そう考え直すと手段は別でも用意出来そうな気がしてきた。

ルーシーの心労の多くは医療担当としての責任感だろう。
それを軽減する事が出来ればいいと考えた時に大きな見落としに気が付いた。

『島で唯一の医者』

この状況が良くない。
彼女に倒れられると為す術は無いとまで分かっていたのにその状況を改善していなかった。
嵐の時にティッキィが慣れないながらも医療行為を行っていたのを思い出した。
医者を作ろう。

……俺は冷静だし、正気だ。

半人前の医者を二人用意すれば一人の医者になる。
つまりもう一人半人前の医者が居ればいい。
幸いにも倉庫に医療セットはある。製法や分量を完璧に真似る事が出来れば作れる。
寸分たがわずに作らなければ効果はあまり無いのだろうか。分からない。
――分からないからそうした。めちゃくちゃ集中した。

ルーシーに確認して貰った所「合っている」との事だった。
ティッキィと俺で半人前の医者が二人、つまりは医者が一人作れたとも報告した。
……なんかきょとんとしていた。
俺は彼女の心労の一端を和らげる事がこれで出来たのか確証を持っていない。
それでも彼女がもし倒れた時は半人前の医者二人でやれるだけの事をやってみよう。
勿論、みんなの事も俺は治療していくつもりだ。
……半人前の医者に見られたくないと断られたら素直に引き下がろう。
多分ちょっとへこむ。

拠点の増設に協力してくれる人を探した時にシジリが快く引き受けてくれた。
人では無いのは理解していたが、何より友好的で協力的な事が分かった。
俺たちとなんら変わりは無い。大切な仲間の一人だと理解した。

『時間の掛かる道路作り』
『煙草の代替案として医者の用意』
『拠点の広さが休息に影響を与えるのかの検証』

全て揃った。俺は睡眠を取る為に横になった。
……もう一つ大事なモノがあった。

常に持ち歩いている“安眠効果”のある花を傍に置いた。
強い香りを持つその花を置いてしばらくそれを眺めた。
贈り物として貰ったそれが近くにあるとなんだか安心出来た。
これが“安眠効果”の力なのだろう。
香りだけではなく、見ている事にも効果があるとは思わなかった。

確かにその花には“安眠効果”が存在した。