暑い。
「あっつぅ〜い!」
「……こんな暑い日は、好きな物書きの話を思い出すね」
「うだるような夏の暑さとか、上手くいかない原稿に文句を言いながら
遠くに見えるほんの僅かな山上の雪を頼りに、冬の物語を綴る……」
「チビの頃読んで、いたく気に入って真似をよくしてたのだけど。
あれ、題名なんだったっけね」
「あんまり覚えてないや。
お姉さん、過去は握りしめておかない主義なの」
「記憶の底に泳がせておいて、たま〜に、ほんのたまに。
ふっと浮かびあがってきたのを見て、懐かしむのが昔ってもんでしょ?」