Eno.447 白岩 美夜

暑い。

「あっつぅ〜い!」


「……こんな暑い日は、好きな物書きの話を思い出すね」


「うだるような夏の暑さとか、上手くいかない原稿に文句を言いながら
 遠くに見えるほんの僅かな山上の雪を頼りに、冬の物語を綴る……」



「チビの頃読んで、いたく気に入って真似をよくしてたのだけど。
 あれ、題名なんだったっけね」


「あんまり覚えてないや。
 お姉さん、過去は握りしめておかない主義なの」


「記憶の底に泳がせておいて、たま〜に、ほんのたまに。
 ふっと浮かびあがってきたのを見て、懐かしむのが昔ってもんでしょ?」