Eno.139 河相 都々之

たとえば遠く 知らない場所で咲き散る花の、名前とか

ずっと遠くの知らない場所の綺麗なお花のことを、それがいつ芽吹いたのか、どんな風に吹かれたのか、それから……いつ枯れて土に戻ったのか。
私たちがずっと知らずに生きているみたいに、今の私たちのことをきっと誰も知らないんでしょう。
な~んてことを都々之は思うのです。

つまり、私たちの見た日暮れの森の景色も、頑張って作ったサンドイッチの味も。
暑くてしょうがない時間のことも、それでだらだらお喋りしてたひとときも。
私たちが覚えておかなければ……なんの記憶にも残らないわけです。

ひとつ摘んで作った押し花は境遇をお話してくれないし、思い出は押し花にできない。
だから、そんなことを考えたって私にできるのは一つだけ。

私たちの頭にしかない思い出のこと、ぜ~んぶ忘れず覚えておくこと。
そりゃあ、文字にして誰かに喋ったり、どこかに残したら確実かもしれないけど……。
でも、私たちしか知らない話って言うのも、ちょっぴり特別な気がして。それもほんのり捨てがたいから。
今のところは、私の頭の真ん中に。
大事にとっておくんですっ。