Eno.424 湖畔の屋敷に住む少女

*

パラパラと紙の音がする。
真っ白の本が、どこかの屋敷の書斎で頁を進める。

パン、と鈍く手を叩く音。
こっちだよと、こちら・・・側へと手を振ってくる。

----------------------------------------------------------




「――可愛い子には旅をさせろ、と言うだろう?」

「あぁ、何を言っているかわからない?
 いやなに、ウチの子トーカのことだよ」



ひらり、手のひらに白い花を浮かべてみせる。
それはすぐに枯れ落ちて、粒となり消えてゆく。



「あの子が帰りたがるのは想定内だった。
 屋敷の外や、私たち以外の存在と関わって来なかったんだから、当然だろう」

「自身を厭い、他者を避ける……でも、あの子はまだ幼い」

「まだ、凝り固まった価値観を崩すことができる範囲だと思ったんだ」



くす、と“家主”が笑った。


「まぁ、幼いと言っても賢いからね、僕の仕業だと気付いてるみたいだけれど」

「大丈夫、ずっとここで、ラセンと使用人と見守っているよ」



「俺は絶対に、君の味方だからね、トーカ」





----------------------------------------------------------

その日は、ラセンと家主サマとピクニックをしていたの。
リボンのバッグに、サンドイッチと絆創膏を詰めて。
浮かんだボートに乗って、湖へ漕ぎだして。

トーカはね、自分だけの   を探していたの。