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パラパラと紙の音がする。
真っ白の本が、どこかの屋敷の書斎で頁を進める。
パン、と鈍く手を叩く音。
こっちだよと、こちら側へと手を振ってくる。
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ひらり、手のひらに白い花を浮かべてみせる。
それはすぐに枯れ落ちて、粒となり消えてゆく。



くす、と“家主”が笑った。



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その日は、ラセンと家主サマとピクニックをしていたの。
リボンのバッグに、サンドイッチと絆創膏を詰めて。
浮かんだボートに乗って、湖へ漕ぎだして。
トーカはね、自分だけの を探していたの。
真っ白の本が、どこかの屋敷の書斎で頁を進める。
パン、と鈍く手を叩く音。
こっちだよと、こちら側へと手を振ってくる。
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「――可愛い子には旅をさせろ、と言うだろう?」

「あぁ、何を言っているかわからない?
いやなに、ウチの子のことだよ」
ひらり、手のひらに白い花を浮かべてみせる。
それはすぐに枯れ落ちて、粒となり消えてゆく。

「あの子が帰りたがるのは想定内だった。
屋敷の外や、私たち以外の存在と関わって来なかったんだから、当然だろう」

「自身を厭い、他者を避ける……でも、あの子はまだ幼い」

「まだ、凝り固まった価値観を崩すことができる範囲だと思ったんだ」
くす、と“家主”が笑った。

「まぁ、幼いと言っても賢いからね、僕の仕業だと気付いてるみたいだけれど」

「大丈夫、ずっとここで、ラセンと使用人と見守っているよ」

「俺は絶対に、君の味方だからね、トーカ」
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その日は、ラセンと家主サマとピクニックをしていたの。
リボンのバッグに、サンドイッチと絆創膏を詰めて。
浮かんだボートに乗って、湖へ漕ぎだして。
トーカはね、自分だけの を探していたの。