追憶の書 十一頁目
『嘘吐きは泥棒の始まり』という言葉がある。
学校では正直を美徳として教えられる。
でもそれは、本当に本人のためを思っての事なのだろうか。
少なくとも、僕の母さんはそうじゃなかった。
自分の都合の良い人間を、
自分の都合の良いように仕立て上げようとした。
僕だって、そうなりたかった。
僕だって、そうなろうとしたんだよ。
でも、僕が薄々感じていた通り、
母さんの疑念は『母さんの頭の中』だけのものでしかなかった。
嘘のつけない僕は、結局、
そういう母さんの心を容れてあげる事が出来なかった。
けれども、もし、僕がもう少し要領の良い人間だったなら……、
優しい嘘で包んであげられたのだろうかと、思う事もある。