4日目 拠点
少し、息がしやすくなった。
……ような、気がする。何かが大きく変わった訳ではない。
遭難している現状も、この島が近いうちに沈む事実も変わらない。
それでも自分の弱音を吐き出したことと、
心配していたうちの一人から無理をしすぎないとの言葉を聞けたことで。
抱えすぎていたものが少し軽くなって、胸のつかえが取れたのかもしれない。
相変わらず足はふらつくし、きっと悪夢だって見るだろう。
食事への忌避感と強迫観念が薄まっても喉を通らないものも多い。
動き回っている方が気が紛れるから、どうしても出来ることを探してしまう。
とはいえ、体力の限界を超えて動くことは止めようと思う。
無理をしなければろくな荷物も運べない軟弱な身ではあるが、
心配をかけない範囲で留めると約束したから。
拠点の隅に座り、置いた荷物に手を伸ばす。
託されたカニぬいはここにいてもらうだけになるかも、と。
狼ぬいの上に乗せたそれを、強張りの解けた指先でゆるりと撫でた。
誰にも話せなかったことは、もう聞いてもらえたから。
きっと、これからも聞いてもらえるから。