Eno.134 愛庵 芽花

出席番号1.5番

「パパ見て!
 入学式楽しみね〜!」


使った形跡のない、新品の赤いランドセル。
それを初めて背負ったとき、
とても心が踊ったのを覚えている。

「そうだなアカリ。
 一緒に選んだランドセルだもんな」


パパは言ったけど、
私はそれを一緒に選んだ覚えはなかったわ。

「さあ、ボディの新調をしよう。
 これがあれば、小学校でもほとんど違和感なく
 過ごせるはずだよ――」





私は、愛庵アイアン芽花メイカ

堂々たる”あ行”の並びゆえに、出席番号レースの1番を誰にも譲ったことがない。
だから、同じく”あ行”並ぶ葵夏月クンは手強い存在だわ!
すぐ私の背中に迫った、数少ない逸材ね!

でも、私は知っている。
唯一私を追い越せる子のことを。

それが、愛庵アイアン灯里アカリ

でも、名前しか知らないわ。
実際に会ったことは無いから。

私が生まれる前、当時幼稚園の年長だった女の子。
詳しくは教えてもらえてないけど、事故に遭ったって話。

私は目覚めた瞬間からアカリと呼ばれて育ったけど、
パパが呼んでいるのが私じゃないことに気づいたのはいつだったかしらね。

まあ、わりとすぐかも。
だって覚えのないことが多すぎたもの。
パパが私に共感を求める思い出話は知らないことばかり。
私がだんだんと不審がるものだから、パパは私にアカリの記憶を組み込もうと躍起になったこともあったっけ。

無駄だったけどね。
アカリと一緒に過ごしたからって、アカリがその時何を思ったかなんて、パパは知る由もない。

私は、アカリになり得ない。

何よりも、アカリが不憫だと思ったわ。
本当のことを無かったことにされて、弔いも、お墓も何にもない。
事故から生還し、とある企業が開発する最新鋭の義肢や補助器具で生きている……という虚偽の記録のみがそこにある。

私には代謝がない、当然身体も成長しない。
他の子たちの成長に合わせ、年齢に見合ったボディを新調する必要があった。
でも、毎日顔を合わせる相手が、ある日を境に突然成長したら驚くのは当然。
だから、ひとつの地域に留まるわけにはいかず、転校を繰り返し、騙し騙しやってきた。

パパの望むアカリを演じようとしながら――

でも、我慢も限界になるものね!
私の反抗期。
それは、中学生の時。

「私、もうアカリを名乗るのをやめる!」