Eno.491 リケル

馬鹿

知らなかった。
俺、あいつのこと何も知らなかった。

前にも思ったことあるんだ。
そういえばあいつの種族も仕事も、以前何をしてたのかとか、そういうの何も知らないなって。

知らなくても別に困らなかった。

遊ぶ約束してもすっぽかされて
通話呼び出しても数ヶ月とか音信不通で
それなのに急にアポ無しで家に来たりとか
俺がどんなに塩対応したって、へらへら笑ってさ。

それが辰砂っていう生き物なんだなって。

でも、

あいつにはあいつの歩んできた人生があって。
俺には理解できない、想像できないような世界があって。
帰りたい故郷があって、きっと帰らなくちゃいけなくて。
俺が理想だと思う暮らしも、あいつにとっては意味がなくて…


………ううん、意味なんてなくない。

はあ、ほんと馬鹿。
あいつじゃなくて、俺が。
あんな赤黒毛玉のために必死になってんだから。

あんたがどういうつもりでコレをくれたのか知らないけど、
俺は本気で作ってやる。

今度は、俺があんたを…。