Eno.299 沙夜

うそとまこと

『わたしが招かれたのは、お宮ではなく、島でした。
 小さな島でしたが、豊かでした。海の色が違いました。魚が、貝が違いました。見たことのない実を揺らして、木は高く生い茂っていました。
 わたしはひとりではなく、見たことのない髪と目の色のひとたちと、島に招かれました。
 お国も、どうやら言葉も違うひとたちでしたが、不思議と何を言っているかはわかりました。
 小さな学者さん、キキ。
 未来からきた娘、錨静夢。
 聡明で冷静な牧田。
 快活なロア・リコリスト。
 神の印、アルファグロリアス。
 王、シャダイード。
 みな、わたしのしらなかったたくさんのことを、知っていました。
 火がなければ火を熾し、水に困れば海水から水をつくり、寝る場所がなければ家を建てました。
 足りないあらゆるものを、みなは作りました。生活が楽になれば、その楽しみまで作ったのです。
 島は、ただひとつ島だけではありませんでした。
 遠海に通じ、7日のうちには、船がそばを通りました。世界を渡れる船がありました。
 きっと、お宮はほかに、あったのでしょう。
 神さまはなんにもおっしゃいませんでしたが、わたしは、この島に招かれた理由を考えて、考えて。
 見聞きしたもの、学んだもの、そして、種を。持ち帰れと、わたしにさだめたのです』