--- の外---
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その時に気づいたのは、まるで が異端であるという事だけでした。
ぬるぬるする暖かな掌の温度を握りしめて、 は一目散に駆けだしたのです。
2本の足はまるでアンバランスで、これが4本であればもっと良いと幾度と思いました。

「大切なものって、何?“ ”以上のものって、この世界にあった?」
はその問いに答える言葉を持ち合わせておりませんでした。
生まれる前から、死ぬ前から、目覚める前から、眠る前から。
はたったひとつの為にここに在り、不格好な生命の歩みを模倣し続けていたのです。

それが愚かであるとして、この目に見える星屑の数程には怒るひとも居たでしょう。
かと言って今更存在意義を手放せ等と呪いで縛りつけたとして、 に為す術は無いと言うのに。
今でさえ冷たい水の中首を横に振り続けた、君の見るべきは網膜の裏側でした。

──誰?
答えはもうどこにも無く、頭の中に響く存在しない声だけがいやに鮮明かつ明朗です。
膨らんだカーテンに何かを幻視したとして、捲ればそこにあるのはただの空気と風の流れでした。

はそういった所謂ひとつの虚しさを抱え、瞼を閉じてきたに過ぎません。
全ては終わりきっており、その向こう側にはきっと美しい花畑が広がっていて。
しかしそれは鬱金香では無かったのに。
あの眩しい景色だけを追い求めて、より暗い方に暗澹と進み続けるのです。
知る事、気付く事、それら全ては の諦めの事。終わりの事。無駄であった事。

──爆ぜる星より、彩る花より、巡る季節と眠った瞼よりも多い、これ迄が!
その価値を貶める事。何をどうしても、どうしようも無かったという事です。

ですから本当に、瞼を開く訳にいかなかったのです。
そう分かりながら、既に解っているのです。
解は蝶の羽ばたきより小さく掠れ、しかしこの渦潮よりも大きく轟く。
それを の小さな手が必死に抑えつけて、感覚と感情を薄く柔く遠くしていったのです。

「──糸が、」
途切れてしまう事を嫌だと言っていたら、その小指にはもう何も結べなくなっていたのです。
それでいて何かがその指を鬱血させる程、いっそ切断してしまおうというくらいにきつく絡みついていて。
の目はいつだって惑い、何かを見落とそうと躍起になるのでした。
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